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岡山地方裁判所 昭和25年(ヨ)148号 決定

申請人 森藤強 外一九五名

被申請人 品川白煉瓦株式会社

一、主  文

本件申請を却下する。

申請費用は申請人等の負担とする

二、理  由

申請人等代理人は被申請人会社は申請人等に対し、被申請人会社がした昭和二十五年五月二十日から同年六月十九日までの工場閉鎖期間中の休業手当またはこれに相当する賃金を仮に支払えとの仮処分命令を求め、その申請理由として、申請人等は、被申請人会社に雇傭され、その経営に係る岡山県和気郡片上町の岡山工場において各種煉瓦の生産に従事する労働者であつて、被申請人会社名を冠する岡山工場労働組合(以下組合と称する)を組織しているものであるが、組合は賃金制度の改正に関し被申請人会社に対して申入をなし昭和二十五年二月二十三日から同年四月十七日まで前後九回の団体交渉が持たれた。しかるに被申請人会社の不誠意により、妥結するに至らなかつたので、組合は同年四月十九日から同年五月二十日までの間に部分スト十一回ゼネスト一回を行つたところ、被申請人会社は同年五月十九日午後六時組合に対し、翌二十日から右岡山工場を閉鎖し、申請人等を含む組合員の工場立入を禁ずる旨通告し、翌二十日から六月十九日までの間右岡山工場を閉鎖して申請人等の就労を不能ならしめた。しかしながら右工場閉鎖は争議手段としては、(イ)被申請人会社が採用する不合理な賃金制度とこれが改正に対する被申請人会社の不誠実極まる態度とに端を発し、(ロ)組合の切崩しのためになされたものであり、(ハ)その閉鎖期間は無期限であり、著しく闘争的である。(ニ)右工場閉鎖をなす前及びその閉鎖期間中違法に団体交渉を拒否して紛争解決のための努力を怠つているのであつて、信義誠実の原則に反して争議権を濫用した違法なものであるから、結局、本件工場閉鎖は被申請人会社の責に帰すべき休業と同一視すべきものである。よつて申請人等は、被申請人会社に対し、昭和二十五年五月二十日以降同年六月十九日までの間について、平均賃金の六割を請求する権利があるのであるが、本案訴訟の確定をまつていては、その日暮しの貧乏人である上、争議中賃金を得られず、現に配給米すら買えないで町当局に掛売や一日売を懇願している申請人等は償うことのできない損害をうける虞があるので右請求権保全のため本件申請に及んだとのべた。

よつて、被申請人会社がなした本件工場閉鎖が争議手段としては争議権の濫用であるとの申請人等の主張について判断するに、叙上(イ)の被申請人会社の本件工場閉鎖がその採用する不合理な賃金制度に端を発したとの点については、仮に申請人等の主張の通りとするも、これがため本件工場閉鎖を争議手段としては争議権の濫用であるとする理由にはなし難い。また、右賃金制度の改正に関する被申請人会社の態度が不誠実極まるものであつたとの点についても、申請人等の提出する疎明の限りにおいては会社が組合との団体交渉において右賃金制度改正に関する組合の要求に応ぜず従来の制度を固持した点は認め得るが、その態度がさらにすすんで申請人等主張のように不誠実極まる態度によつてなされたとの事実は認め難く、なお、本件工場閉鎖が被申請人会社の右賃金制度の固持に端を発したとしても、これをもつて本件工場閉鎖を争議手段としては争議権の濫用であるとする理由とはなし難い。(ロ)については本件工場閉鎖が組合切崩しの手段としてなされたことについての具体的な事実の主張はなく、また疎明資料もない。(ハ)の工場閉鎖期限が無期限であつたとの主張については仮に右工場閉鎖について期限を附せなかつたとしても、かかる工場閉鎖について期限を附するか否かは特別の事情がない限り、使用者の任意によるものであつて、単に工場閉鎖に期限を附せなかつたとの一事により、これをもつて争議権を濫用するものとしその適法性を否定し得るものではない。また右工場閉鎖が著しく闘争的であるとの主張についてはそのことが直ちに争議権の濫用を招来するものとは解し難い。(ニ)の本件工場閉鎖の前及びその閉鎖期間中、被申請人会社が組合よりの団体交渉を違法に拒否し、紛争解決の努力を怠つたとの点については、これを認むるに足る疎明資料はない。かえつて、叙上申請人等の主張によれば、組合と被申請人会社との間には、本件賃金制度の改正に関し、昭和二十五年二月二十三日から同年四月十七日までの間、前後九回の団体交渉が持たれたが妥結せず、よつて、組合は主張貫徹のため、同年同月十九日から同年五月二十日まで三十三日間に部分スト十一回、ゼネスト一回を行い、被申請人会社もまた同年五月二十日から六月十九日までの間、その岡山工場を閉鎖し、いわゆる工場閉鎖の争議手段に出でたことは申請人等の自認するところであるのみならず、申請人等提出の疎明方法によれば、叙上前後九回の団体交渉においては勿論、その後のストライキ、工場閉鎖期間中においても、組合と会社は互に自己の従前の主張を固持し交渉の妥結を見なかつた事情が窺われるのであつて、結局被申請人会社に申請人等主張のような団体交渉義務違反の事実を認めることはできない。従つて、これを前提とし本件工場閉鎖をもつて争議権の濫用とする申請人等の主張は採用し難い。

以上要するに被申請人会社がなした本件工場閉鎖が争議手段としては争議権の濫用であるとの申請人等の主張は理由がなく、この点に関し、疎明にかえて保証を以てすることも適切ではない。従つて、その余の点について判断するまでもなく申請人等の本件申請は失当として却下を免れない。よつて申請費用の負担について民事訴訟法第八十九条第九十五条を適用して主文の通り決定する。

(裁判官 井上開了 三関幸太郎 富田善哉)

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